今回は、ECサイトのリニューアルと広告運用を制作会社に依頼したものの、思うような成果につながらなかった事例です。
「公開後もデータを見ながら改善します」という説明に安心して発注したものの、実際には具体的な分析や改善提案はほとんどなし。F氏が確認すると、そもそも改善に必要なデータが十分に取れていないことが分かりました。
“作って終わりではない”と言われたとき、発注前に何を確認しておくべきだったのか。匿名座談会形式で振り返ります。
WEB制作会社やECコンサル会社に依頼したものの、
「思ったような成果が出ない」
「何が悪かったのか分からない」
「あとから見たら、発注前に確認すべきことがたくさんあった」
そんな声を、事業者さんから聞くことがあります。
このシリーズでは、実際にあった相談内容をもとに、WEB制作・EC支援の失敗談を匿名で紹介。
イエティママが体当たりで話を聞きながら、WEB業界の裏側に詳しい正体不明のコンサルタントF氏・M氏が、失敗ポイントと発注前に確認すべきことを解説します。
※本記事は、実際に寄せられた相談内容をもとに、個人・企業が特定されないよう一部内容を再構成しています。特定の企業やサービスを批判することを目的としたものではなく、同じような失敗を防ぐための注意喚起として掲載しています。
このエピソードに登場するひと

イエティママ
イエティの母。
Webメディア『地図をひらく』編集長。
WEB業界の専門知識はないけれど、事業者目線で素朴な疑問をぶつける係。

匿名ゲストAさん
ECサイトのリニューアルを制作会社に依頼した事業者。
高い費用をかけたにもかかわらず、期待した成果が出ず、F氏に相談。

正体不明のコンサルタントF氏
WEB業界の闇と戦う、仮面のコンサルタント。
見た目は普通に見えるサイトの“中身”を見抜くのが得意。
ただし、イラストを見るとだいたい誰なのか分かる。
ご相談の背景
- 会社としてECに力を入れることになり、ECサイトのリニューアルを制作会社に依頼。
- 「作って終わりではなく、公開後もデータを見ながら改善していく」という説明に安心し、高額な費用をかけて発注。
- 公開後、広告運用も始まったものの、売上は思うように伸びず、具体的な分析や改善提案もほとんどない状態に。
- 釈然とせずF氏に相談したところ、改善の前提となる重要なデータが取れていないことが判明。
- “改善します”“PDCAを回します”という言葉だけでは分からない、制作後の運用体制や計測設計の落とし穴を振り返ります。
「有名そうな制作会社だから安心」と思っていた

今回のご相談は、ECサイトのリニューアルと、その後の運用支援についてですね。まず、どうして外部会社に依頼しようと思ったんですか?

会社として、これからECに力を入れようという話になったんです。ただ、もともとのサイトはかなり前に作ったままで、正直ほとんど機能していませんでした。

“あるにはあるけど、売るためのサイトにはなっていなかった”という感じですか?

そうです。デザインも古くて、更新もしにくい。集客もほとんどやっていませんでした。しかも、自分自身もEC担当になったばかりで、何を見ればいいのか、どう改善すればいいのか、まったく分からない状態でした。

それは心細いですね…。

社内にも相談できる人がいませんでした。だからこそ、ECの知見があるプロにお願いすれば、サイトを新しくして、広告もかけて、売れるようにしてもらえるのではないかと思っていました。
決め手は「作って終わりではない」という説明だった

その制作会社さんは、どうやって見つけたんですか?

普段からWEB制作会社さんの営業は複数社から来ていました。自分でも調べて、営業された会社も含めて、いくつか提案をもらいました。

その中で、今回の会社に決めた理由は何だったんですか?

弊社と近しいEC制作事例が多かったことです。会社としてもそれなりの規模がありそうで、提案資料もしっかりしていました。

近いEC実績が多いと、安心感がありますよね。

はい。それに、「当社は作るだけではなく、その後の運用もやります」と言ってくれたんです。サイトを作って終わりではなく、公開後に広告をかけて、データを見ながら改善していきましょう、という説明でした。

それは、EC初心者の担当者さんからすると頼もしく感じそうです。

まさにそうでした。営業担当の方と一緒に出てきたコンサルタントの方も、すごく知見がありそうで。「この人が見てくれるなら安心だ」と思いました。
高額でも「ここまでやってくれるなら」と納得して発注

費用感としてはどうだったんですか?

安くはなかったです。全体で数百万円規模でした。

かなり大きな投資ですね。

そうですね。でも、会社としても本気でECに取り組もうとしていたので、きちんとしたサイトにするにはそれくらい必要なのかなと思いました。

依頼内容としては、サイト制作だけではなかったんですよね?

はい。ECサイトのリニューアル、広告運用、保守、公開後の分析や改善提案まで見てもらえると思っていました。

「制作+運用+改善」までセットで任せるイメージだったんですね。

そうです。特に、公開後にPDCAを回していくという説明に安心しました。自分たちには知識がないので、そこをプロに任せたいと思っていました。
制作が始まると、営業時のコンサルタントが出てこなくなった

実際に制作が始まってからは、どうでしたか?

最初の打ち合わせには、営業時に話していたコンサルタントの方も出てきました。でも、その後はほとんど登場しなくなりました。

えっ。営業時に安心感があった、そのコンサルタントの方が?

はい。実際にやり取りすることになったのは、デザイナー兼コーダーの若い担当者さんでした。

ディレクターさんではなく?

少なくとも、私にはディレクターという感じには見えませんでした。こちらが質問しても「確認します」と持ち帰ることが多くて。レスポンス自体は悪くなかったんですが、お互いに知識が足りないまま話している感じがありました。

AさんもECに詳しくないし、相手の担当者さんも判断できない。かなり不安な進行ですね…。

そうなんです。営業時のコンサルタントと直接話したかったんですが、全然出てこない。電話もつながらない。不安しかありませんでした。
見た目はきれい。でも「売るための設計」だったのかは分からない

制作の進め方として、サイトマップやワイヤーフレームは出てきたんですか?

一応、出てきました。ただ、それが良いものだったのかどうかは、当時の自分には判断できませんでした。

たしかに、発注側に知識がないと「これで大丈夫なのか」は分からないですよね。

そうなんです。後からF氏に相談したときに、かなり広く深くヒアリングされたんですが、その時に「あれ、制作会社とはこんな話をしていないな」と思いました。

商品のことや、お客様のことですか?

はい。制作会社には、商品カテゴリやデザインの話はしました。でも、「誰にどう売るのか」「どの商品をどう伸ばすのか」「購入までにどんな不安があるのか」みたいな話は、あまり深くされなかったと思います。

完成したサイトの見た目はどうでしたか?

見た目はきれいでした。社内の反応も良くて、「きれいになったね」と言われました。

でも、不安は残っていた。

はい。制作中から不安があったので、「きれいだけど、本当にこれで売れるのかな」という気持ちはずっとありました。
公開後、広告費は使われる。でも成果が見えない

公開後は、広告運用も始まったんですよね?

はい。広告費を入金して、運用が始まりました。

成果はどうでしたか?

ゼロではありませんでした。もともと何もやっていなかったので、多少は売れるようになりました。でも、かけた費用を考えると「これだけ?」という感じでした。月に数件売れる程度で、とても期待していた成果とは言えませんでした。

広告の費用対効果は分かりましたか?

正直、広告費が使われていることしか分かりませんでした。効果が良いのか悪いのかも分からない。売れていないので、たぶん悪いんだろうな、くらいです。

制作会社さんから分析や改善提案はありましたか?

ほとんどありませんでした。こちらから「どうなっていますか?」と何度も連絡しましたが、コンサルタントとは基本的に連絡が取れません。やっとメールが返ってきても「状況確認します」で止まってしまう感じでした。
「サイトが悪いのか、広告が悪いのか、商品が悪いのか」分からなくなった

その時点で、何が原因だと思っていましたか?

もう、何が悪いのか分かりませんでした。サイトは新しくした。広告費も使っている。でも売れない。
ただ、BtoBでは売れている商品だったので、商品自体が悪いとは思えなかったんです。

だからF氏に相談したんですね。

はい。元の制作会社に連絡しても改善する見込みがなかったので、もう別の会社に相談しようと思いました。知りたかったのは、今サイトに何が起きているのか、何がダメなのか。あと、制作会社の一連の対応が業界的に普通なのかどうかも聞きたかったです。
F氏「まずデータを見ようとしたら、そもそも取れていなかった」

そこで、正体不明のコンサルタントF氏の出番ですね。

どうも。正体不明のコンサルタントFです。

(だいたい誰だかわかりますけどね)
今回は、最初にどこを見たんですか?

まず、サイトの表側を見ました。見た目は、そこまで大きな違和感はありませんでした。導線も、一見すると必要なものはあるように見えました。

見た目だけでは、そこまで悪く見えなかったんですね。

はい。だから次に、実際のデータを見ようとしました。どこから来た人が、どの商品を見て、どこで離脱しているのか。カートに入れているのか。購入まで進んでいるのか。

EC改善では、そこを見るんですね。

そうです。ところが、確認してみると、カテゴリページからの商品選択や、カート追加など、ECで重要な行動データが全く取れていませんでした。

えっ。改善するためのデータが?取れていなかった??
「便利そうな仕様」が、計測できない原因になっていた

どうしてデータが取れていなかったんですか?

サイトの仕様として、商品ページやカートページに遷移せずに、ページ上でアクションできる作りになっていました。

それだけ聞くと、便利そうに感じます。

ユーザーにとって便利に見える場合もあります。ただし、その仕様にするなら、GA4※などで行動データを取るために、別途きちんとした計測設定が必要になります。
※Googleアナリティクス4:Webサイトやアプリのユーザー行動をイベント単位で計測・分析できるGoogleの無料アクセス解析ツール

普通に作っただけでは、データが取れないんですか?

ページ遷移で自然に取れるデータが取れなくなることがあります。なので、イベント計測を設計して、必要な行動が分かるようにしなければいけません。

そんな説明は、まったく受けていませんでした。

高度な設定ができる会社なら、その仕様でも問題ありません。ただ、設定できないのであれば、安易にその仕様にすべきではありません。少なくとも、「この仕様にすると、通常の設定ではデータが取りにくくなるので、別途計測設計が必要です」と説明すべきです。
「改善します」と言いながら、一度も分析していなかった可能性

でも、データが取れていないことって、制作会社さんは気づかなかったんでしょうか?

GA4を見れば、すぐに分かる状態でした。

すぐに分かるんですか?

はい。ECサイトで改善をするなら、まず見るべき基本的なデータです。そこが取れていないことに気づいていないなら、そもそも分析画面を見ていなかった可能性があります。

「公開後にデータを見て改善します」と聞いていたので、そこは本当にショックでした。

もちろん、制作会社側の事情は分かりません。ただ、少なくとも、改善提案をする前提なら、必要なデータが取れているかを確認することは最低限必要です。

改善するって言っていたのに、改善に必要なデータが取れていなかった…。
これはかなり大きな問題ですね。
見た目を変えただけでは、商品の強みは伝わらない

広告運用の方はどうだったんですか?

広告も確認しましたが、初期の簡易的なキャンペーン構築のまま、自動化に任せきりになっているような状態でした。

自動化って、よく聞きますよね。自動なら良さそうにも聞こえますが…。

自動化そのものが悪いわけではありません。ただし、広告の自動最適化は、正しいコンバージョンデータ(購入のデータ)が取れていることが前提です。

コンバージョンデータが取れていないと?

広告側が「どんなユーザーが成果につながったのか」を学習できません。すると、いつまでも学習のための配信が続いてしまったり、成果につながらない配信に予算を使い続けてしまったりします。

広告費が使われていることしか分からない、という感覚は間違っていなかったんですね。

はい。広告は出せば売れるものではありません。特にECでは、計測、商品ページ、導線、訴求、広告配信をセットで見ないと、費用対効果は改善しません。
問題は「担当者個人」ではなく、責任者不在の体制だった

Aさんは、実際に担当していた若い方にも不満があったんですか?

正直、対応は頼りなかったです。でも、今思うと、その方だけが悪いとは思っていません。彼は彼なりに頑張っていたと思います。

責任を持つべき人がいなかった、という感じですか?

そうです。営業時に出てきたコンサルタントが、最後まで責任を持って対応してくれなかったことが一番納得できませんでした。

これはよくある問題です。営業時には知見のある人が出てきて、すごく頼もしく見える。でも受注後は、その人がほとんど関わらない。

営業のときだけ、強い人が出てくるんですね…。

もちろん、分業自体は悪いことではありません。ただし、その場合は、実際の担当者をフォローする体制が必要です。

まさにそこです。担当者が分からないことを聞ける責任者がいて、必要なときに出てきてくれるなら、ここまで不安にはならなかったと思います。

知見のある人が新規営業にばかり出ていて、受注後の顧客対応や社内育成に関われていないと、現場の品質が安定しません。これは担当者個人というより、組織としての体制の問題です。
「作って終わりではない」と言うなら、何をするのかを確認すべきだった

今回の一番の落とし穴はどこだったんでしょうか?

「作って終わりではありません」という言葉だけで安心してしまったことだと思います。

たしかに、そこにかなり安心していました。

でも、本当に確認すべきなのは、その中身です。
・誰がデータを見るのか
・どのデータを見るのか
・どの頻度で確認するのか
・どんな形式で報告されるのか
・改善提案はどこまで含まれるのか
・広告運用とサイト改善はどう連動するのか
・追加費用がかかる範囲はどこからなのか
ここまで確認しないと、「見ます」「改善します」の意味が、発注側と制作会社側でズレることがあります。

Aさんの場合も、「作った後も見る」と言われていたけど、その“見る”の意味が曖昧だったんですね。

はい。こちらは、積極的に分析して改善してくれると思っていました。でも実際には、ただ連絡が取れる状態という意味だったのかもしれません。

ここは契約前に、かなり具体的に確認した方がいいです。
発注前に確認したいポイント

では、私たちが発注前に確認しておくべきだったことって、具体的には何だったんでしょうか?

今回のように、サイト制作後の運用や改善まで依頼する場合は、最低限、以下は確認した方がいいです。
1. 営業時の担当者と、実際の担当者は誰なのか
営業時に説明してくれた人が、契約後も関わるとは限りません。
発注前に、
- 実際に制作を進行する人は誰か
- ディレクターや責任者は誰か
- コンサルタントはどの範囲まで関わるのか
- 打ち合わせには誰が出るのか
- 困ったときに誰に相談できるのか
を確認しておきましょう。
「営業時に出てきた人が頼もしかったから安心」ではなく、契約後の体制を見ることが大切です。
2.「公開後の改善」の具体的な内容
「改善します」「PDCAを回します」という言葉だけでは、対応範囲が分かりません。
- 毎月データを見るのか
- どの数字を見るのか
- レポートは出るのか
- 改善提案はあるのか
- 改善作業まで含まれるのか
- 改善作業は別料金なのか
- 広告運用とサイト改善は連動するのか
を確認しましょう。
“見る”という言葉が、単に連絡を受けるだけなのか、積極的に分析して提案することなのかで、支援の中身は大きく変わります。
3.GA4や広告の計測設計まで対応してくれるのか
サイト制作後に改善するには、データが必要です。
特に、購入・問い合わせ・応募・資料請求などの成果だけでなく、
- どのページを見たか
- どのボタンをクリックしたか
- カートに追加したか
- フォーム入力まで進んだか
- どこで離脱したか
など、成果に至る前の行動も見られる状態にしておく必要があります。
「GA4を入れます」だけでは不十分な場合があります。
自社のサイト仕様に合わせて、必要なイベントまで設計してくれるのかを確認しましょう。
4.広告運用は“出稿”だけなのか、“改善”まで含むのか
広告は、出すだけなら比較的簡単です。
大事なのは、
- 何を成果として計測するのか
- 配信結果をどう判断するのか
- 成果が悪いときに何を変えるのか
- 商品ページや導線の改善まで提案するのか
- 自動化任せにせず、人が確認しているのか
です。
広告運用を依頼する場合は、運用手数料の中にどこまでの作業が含まれているのかを確認しましょう。
5.サイト制作と成果改善を、誰がつなげて見るのか
制作担当、広告担当、コンサル担当が分かれている場合、それぞれが別々に動いてしまうことがあります。
しかし、成果を出すには、
- サイト設計
- 商品・サービスの訴求
- 導線
- 計測
- 広告
- 改善提案
をつなげて見る人が必要です。
発注前に、「全体を見て責任を持つ人は誰か」を確認しておくことが大切です。
6.公開後の改善体制があるか
ECサイトは、公開して終わりではありません。
公開後に、
- アクセス解析を見るのか
- 購買行動を確認するのか
- 商品ページや導線の改善提案があるのか
- 広告やSEOとの連携まで見られるのか
を確認しましょう。
今回の教訓

今回のお話を聞いて、「作って終わりではありません」「データを見て改善します」という言葉だけで安心してしまうのは危ないんだな…と感じました。
もちろん、公開後の改善まで見てくれる会社は心強い存在です。
でも、本当に大事なのは、その“改善”の中身が具体的に決まっているかどうか。
発注前には、こんなところを確認しておくとよさそうです。
サイトリニューアル・運用発注前のチェックポイント
- 営業時の担当者が、契約後も関わってくれるのか
- 実際に制作・運用を担当する人は誰なのか
- 公開後の「分析」「改善提案」は、どこまで含まれているのか
- GA4や広告の計測設計まで対応してくれるのか
- 成果に至る前のユーザー行動まで見られる状態にしてくれるのか
- 広告運用は、出稿だけでなく改善まで含まれているのか
- サイト制作と広告運用をつなげて見てくれる責任者がいるのか

見た目がきれいなサイトでも、広告が出ていても、
改善に必要なデータが取れていなければ、次に何を直すべきかは分かりません。
だからこそ、「改善します」という言葉を聞いたときほど、
何を、誰が、どの数字を見て、どう改善してくれるのか。
発注前に、少し踏み込んで確認しておくことが大切だと感じました。









