サイトリニューアルをお考えの方からのご相談で、次のような「費用」に関するお悩みをよくお伺いします。
サイトリニューアルを考えてまして、
何社か見積もりを取ったのですが、価格がバラバラでして、、
何を基準に考えたら良いでしょうか?
安く済むに越したことはないですが、安さだけを基準に選んだ結果、費用対効果が伴わず、結果的に損する、ということもあります。
金額だけを見て判断するのではなく、その裏にある価格の根拠やそれによって得られる効果、その効果を最大限に活用できるか、などを踏まえて判断する方法を解説します。
見積もりの価格の根拠を理解する
安いか高いか、を判断するには、そもそも、見積もりの価格の根拠を理解する必要があります。
多くの場合、サイトリニューアルは人件費から算出しています。
基本的に、サイトは人が作りますので、サイト作りに携わる人達の人件費が元になっているということです。
見積もりの単位、「工数」という考え方
WEB制作の見積もりでは、よく「工数」という単位を使います。
1工数は一人の人間を1時間稼働させた場合の金額です。
同じ考え方で以下のような単位もあります。
1人月: 一人の人間を1ヶ月稼働させた場合の金額
1人日:一人の人間を1日稼働させた場合の金額
工数は作業量で変わります。
作業量が多ければ、1工数、2工数、3工数、、、と増えていきます。
一般的には制作するページ数が増えるほど工数も増えますし、
1ページあたりのボリュームが多ければ工数も増えていきます。
見積もりの金額を決める、「工数の単価」
もう一つ押さえておくポイントが、工数の「単価」です。
これは人ごとに異なります。
時給と同じ考え方です。
1工数 3000円の人もいれば、
1工数 1万円の人もいます。
この金額の差は何かというと、その人の能力の希少性と思ってください。
弁護士さんなどでも、「1時間の相談料が5万円」などがよくありますね。
5万円という金額だけを聞くと高く感じるかもしれませんが、
弁護士資格を得るためには、かなりの時間やお金を費やしていますし、的確なアドバイスができるくらいに経験値を貯めるには相当の時間がかかっており、誰でも簡単にできる仕事ではありません。
自分でその時間かけて、法律の知識を身につけるくらいなら、5万円を払った方が安いので、5万円でも価値があるとして、世の中のニーズが発生しています。
例えば「WEBデザイナー」と一言で言っても、
人によって工数単価が異なります。
WEBデザインアプリを操作できるだけでは、「ここを何色にして、文字の大きさはこのくらいにして」と細かく指示をしないとデザインは完成しません。
WEBデザイナーとしてはまだまだ半人前の状態です。
この場合は単にWEBデザインアプリを操作できるというレベルなので、一般的に工数単価は低くなります。
WEBデザインアプリ自体はyoutubeで調べるなどすれば、大抵の人はすぐに使えるようになりますので、この能力の希少性はさほど高くないということです。
逆に、工数単価が高いデザイナーは、「我が社の社風を表現してほしい」という、かなりざっくりしたオーダーでも、的確なものを作ってくれます。
これは、経験やセンスによるものですので、誰でもすぐになれるものではなく、希少性が高いということになります。
工数単価は低い方が安く済む?
工数単価が低い人と高い人で、同じ仕事をさせた場合に、工数単価が低い方が安く済むとは限りません。
なぜなら、一般的に能力が高くて工数単価が高い人は1時間あたりでこなせる仕事量も多いためです。
例えば、時給1000円の新人アルバイトと、
時給2000円のベテランアルバイトに、
レジ打ち100人分を頼んだ場合、
新人は2時間かかるところを、ベテランは30分で終わるとします。
この場合、時給2000円の人にお願いした方が費用対効果が高いですね。
1000円×2時間=2000円
2000円×0.5時間=1000円
また、工数単価が低い人にお願いする場合、他にもコストがかかってくる可能性を考慮しましょう。
レジ打ちで言うと、新人アルバイトは間違いも多くあるでしょう。またわからないことも多くあると思います。その場合、先輩が側で見て指導してあげる必要があります。これでは、人件費は二人分必要になります。
WEBデザイナーの場合でも同じことが起こります。
デザインのレパートリーや、要望に対する理解力がまだ低い新人デザイナーには、「どのように表現したらクライアントの要望に応えられるか」の的確な指示をしてくれる人が必要です。その役は通常、「ディレクター」と呼ばれる人が行います。デザイナーの工数単価が低い場合は、ディレクターの工数が多く見積ってあることが通常です。
もし、ディレクター(見積もりの項目では「ディレクション」や「進行管理」となっていることが多いです。)の工数が見積もりに含まれていない場合、見積もりは安く抑えられていますが、ディレクターの役割を発注者自身が行わなければなりません。
「安く依頼できた」と思っても、いざプロジェクトが始まると、デザイナーへの要望整理や細かな修正指示など、ご自身の作業が想定以上に多くて、自身の本来の担当業務が止まってしまい、「これなら誰かに費用を払って任せたほうが安かった」と後悔することもよくあります。
クオリティを下げずに安く依頼依頼したい場合、クオリティを守る役割は自身で行わなければならないことを覚えておきましょう。
あなた自身が、能力が高くて、クオリティのディレクションではなく別の業務に時間を使ったほうが生産性が高い場合、クオリティのディレクションは専門家に費用を払ってお願いするほうが、結果的に全体の費用対効果は高いでしょう。
サイトリニューアルには、さまざまな能力が必要で、それぞれの能力を持った人が必要
もう一つ理解しておくと良い点として、
サイトリニューアルには、さまざまな能力が必要で、それぞれの能力を持った人が必要ということがあります。
当然、たくさんの人が関わるとその分コストも上がっていきます。
ざっと以下の感じです。
- コンサルタント(プランナーという言い方もします)
全体の戦略設計をする人、設計のためのリサーチなども行います。 - ディレクター
戦略に沿った品質管理や進行管理をする人。 - デザイナー
デザインを設計する人。 - フロントエンジニア(コーダーとも言います)
デザインをコーディングして、サイトを構築する人。
他、必要に応じて以下の人たちが入ることもあります。
- アートディレクター
- バックエンドエンジニア
- サーバーエンジニア
- カメラマン
- スタイリスト
- ライター
見積もりを見て、なんだかやけに高いな、と感じた場合は、プロジェクトにどれだけの人がかかわるのかを、見積もり元に聞いてみてください。たくさんの人が関わり、それぞれ高い能力が必要な場合は、見積もり金額も高くなると思います。
この内訳をきちんと説明できなかったり、人数も能力も納得感がない場合はその見積もり金額は妥当ではないかもしれません。
結局いくらが妥当?
例えばデザイン費はどのくらいかけるべきなのか?
工数単価が低い人にお願いすると、イメージ通りのデザインが作れず、納得のいくものにはならないかもしれません。
工数単価が高い人にお願いすると、1発でイメージ通りのデザインを作ってくれますが、それなりの金額がかかります。
どっちを取るか、難しいですね。
ヘノブがおすすめする考え方は、
「かけたコストに対して、費用対効果が得られるか」です。
実店舗を作る時と似ているかもしれません。
実店舗をリニューアルする場合で考えてみる
充実した設備と、ブランド感を完璧に表現したデザイン性の高いお店を作ろうと思うといくらでもコストがかかってきます。
しかし、コストをかけた分だけ効果が得られそうか?という視点で考えてみてください。
充実した設備はお店の回転率を上げてくれそうです。
デザイン性の高い内装は、顧客満足度を上げてくれそうです。
果たしてそれらがどのくらい、利益に繋がるでしょうか?
どんなに素敵なお店でも、来店客がなければ意味がないので、集客のための費用もある程度用意しておかなければなりません。
お店にどこまで費用をかけて、集客にどのくらい費用をかけるのか、のバランスが大事です。
ここの答えは無数にあります。
なぜなら、どのような戦略で利益を上げるか、に関わっているからです。
- 奇抜な内装でSNSでバズり、集客コストをかけずに利益を上げる。
- 設備投資で圧倒的な回転率を叶え利益を上げる。
- 客数は少なくても、サービスにコスト投下してリピート率を最大化して利益を上げる。
など、
お店ごとに取るべき戦略は様々で、その数だけ最適なコストの掛け方の答えがあります。
WEB戦略によって最適なコストが決まる
WEBでも同じ考えで、基本的にはWEB戦略が定まっていないうちはどこにいくらかけるべきかを判断できません。
「そもそも、かけたコストをどうやって回収するつもりだったか全く考えいなかった」という場合、まずはWEB戦略をきちんと策定するべきです
ヘノブファクトリーでは、初回無理でWEB戦略策定のお手伝いをしています。
ご自身で策定するのが難しい場合はお気軽にご相談ください。
詳しくはこちら
コスト回収の目処が不確かな場合は、小さくスタートしよう
一つ、よくあるパターンでお伝えします。
例えば、まだオンライン上では打ち出したことがない新規事業のサイトを作ろうとする時。
サイトを作ったところで、本当に反応があるかどうか、やってみないとわかりません。
成功も失敗もどちらの可能性もある場合は、まずは小さく試した方が良いです。
サイトを作る、というと、
トップページがあって、
サービス説明ページがあって、
強みを紹介するページがあって、、
と複数ページに渡る立派なサイトをイメージしますが、
複数ページもあるようなしっかりしたサイトでなくても、1ページでしっかり魅力が伝わるようなページでも十分かもしれません。(「ランディングページ」という方法です。)
一発で完璧なリニューアルを目指すのではなく、テストマーケティングと捉える
ページ制作の費用が浮いた分は、サイトを見てくれる人を呼ぶための広告費にかければ、まずはターゲットに見てもらうことで、オンライン上で商機がありそうかどうか、測ることができます。
いわゆるテストマーケティングというものです。
テストマーケティングで確実性が実証されたら、得られそうな成果に合わせてサイトをさらに充実していけば良いのです。
コストをかける場合の考え方で実店舗の例を出しましたが、実店舗とWEBサイトでは、大きく異なる点があります。
実店舗と比べて、WEBサイトでは増築も改築も割と簡単にできるということです。
直そうと思えばいつでも直せるので、初めは小さくスタートするのがおすすめです。
サイトが出来上がってからかかるコスト
逆に、実店舗と比べてWEBサイトでは不利な点もあります。
実店舗は、初めから人通りのある通りにお店を出せば、お店があることは自然に認知されます。
しかしWEBサイトでは、こちらから働きかけをしないと誰にも存在を気づいてもらえません。
実店舗では店前の通りが認知のきっかけですが、WEBサイトでは検索や広告が出る画面が認知のきっかけです。
そして、その画面には同じジャンルのWEBサイトはすでに無数にあり、競合性はかなり高い状態です。
競合性の高い場所で、自社を知ってもらいサイトを訪れてもらうには、それなりの広告費やSEO対策費用がかかります。
この「サイトが出来上がってからも継続的にコストがかかること」を認識しないまま(もしくは、甘く見積もって)、サイトリニューアルに予算をほとんど使ってしまい、「せっかくサイトができたのに、集客がほとんどできない」という失敗は、実はよくあります。
なので、サイト自体は小さくスタートし、初めは認知や集客にしっかりコストを回し、まずはテストマーケティングを成功させましょう。
ここの判断を誤ると、費用をかけて豪華なサイトを作ったものの、全く機能せず、半年でたたむなんてことも良くあります。
まとめ
見積もりの金額だけを見ると、額の大きさや小ささ、他社との比較から、単純に「高い」「安い」と思いがちですが、いずれの場合も金額の根拠を正しく理解する必要があります。
安く見えた金額が、最終的には利益を生まない無駄な支出になることもありますし、高く見えた金額が、大きな利益を生み出し、結果的にお得になることもあります。
見積もりに対しては、安い場合も高い場合も、きちんと金額の根拠を尋ねましょう。それに対して、納得のいく説明を得られない場合は、後々後悔する可能性があります。
また、根拠に対して、「これで費用対効果を得られるかどうか」もこの段階できちんと考えましょう。どんなロジックで利益を生み出すかが明確でない場合、まだプロジェクトの実行に費用をかけるべきではありません。この場合、まずは戦略設計に時間をかけましょう。時間が惜しい場合はプロに頼むのも良いでしょう。この時ももちろん、納得感のある見積もりであることが重要です。