売上を伸ばしたい気持ちはある。商品にも、自信はある。
でも――何をすればいいのかが、わからない。
今回紹介するのは、そんな状態から少しずつ状況を整理し、売上改善につなげていったECサイトの事例です。
ポイントは、新しい施策を入れたことではありません。
「どこから、どんな順番で考えるか」を整理したこと。
一般論ではなく、その会社の売上構造に向き合ったことで、やるべきことが一つずつ見えてきました。
このシリーズでは、Webメディア『地図をひらく』編集長・イエティママのインタビューを通して、ヘノブが実際のクライアントワークで直面した課題や、そこからどんな判断・選択をしてきたのかを掘り下げていきます。
売上が伸びた/改善できた、という結果だけではなく、その裏側で何を考え、何に悩み、どう決めていったのか。
普段はあまり表に出ない“考えていたプロセス”を、そのままお届けするシリーズです。
※このお話は、実際の相談をもとに構成したフィクションです。
このエピソードに登場するひと

むらせ
ヘノブファクトリーのWebコンサルタント。
好きな海老料理は、海老のお寿司。

イエティママ
イエティの母。
Webメディア『地図をひらく』編集長。
EC運営やサイト運営の悩みをテーマに、実際の現場で起きた出来事を取材している。
成功事例の“結果”よりも、その裏側でどんな試行錯誤があったのかを丁寧に聞き出すのが得意。
今回の事例
クライアント:北陸地方で海産物を扱う企業
サイト:自社ECサイト
商材:白えび(主力・季節商材)/甘えび加工品(通年)
お悩み
- 売上を伸ばしたいと思って色々試したいが、何が正解かわからない
- 商品には自信があるのに、良さがうまく伝わっている実感がない
- 今のやり方を続けた先が、あまり想像できない
事例のポイント
- 何をすればいいかわからない状態から抜け出すまでの話
- 施策ではなく、「考える順番」を整理したことが転換点だった
- 売上インパクトを軸に、やるべきことを一つずつ選んでいった
何か足りない気はしていたけど、どこを直せばいいかわからなかった

むらせさん。
今日は、ヘノブさんがこれまで関わってきたお仕事について、じっくりお話を聞かせてもらえたらと思っています。
この白えびの会社さん、結果だけを見ると、かなり売上が伸びていますよね。
でも、最初はどんな相談だったんでしょう?

ああ、この企業さんですね!
北陸地方で白えびを扱っている会社さんです。

最初は、どんな状態だったんですか?

一言で言うと、
“何か足りない気はするけど、どこを直せばいいかわからない”
という状態でした。
商品には自信もあったし、リピーターもいて、ちゃんと評価もされていた。でも、ECとして見ると、なかなか売上が伸びない。

手応えはあるのに、数字がついてこない。
それは、かなり不安になりますね。

そうですね。
やる気がないわけでもないし、サボっていたわけでもない。
ただ、“このページを直せばいい”とか、“今はここを見るべき”とか、そういう判断の軸がなかったんだと思います。
やる気がないわけじゃない。サボっていたわけでもない。
ただ、どこから手をつければいいかわからないまま、時間だけが過ぎていく。
この状態、実はすごく多いんです。
「毎月改善します」という言葉に、期待してしまった

ヘノブさんと出会うまで、ご担当者お一人で頑張っていらしたんですよね

そうですね。
実は、ヘノブと出会う前に、別の制作会社さんにお願いしていた時期もあったようです。

その制作会社さんでは、この“わからない”状態は解消されなかったんでしょうか?

そうだったようです。
元々は、“毎月サイトを改善します”という話だったみたいですが。

それは……期待してしまいますね。

しますよね。
“何をすればいいかわからない”状態だったら、なおさらです。
ただ、実際に始まってみると、誰も“売上改善の道筋”を示してはくれなかったようです。
なんとなく作業は進むけど、これでどうやって売上を伸ばすのかは、
誰にもわからない状態。
毎月、制作作業は進むけれど、“何か足りない”という感覚は、解消されないままだったそうです。

私だったら、“話が違うかも……”って感じてしまいそうです。

そうだったと思います。
期待していたのは、“作業”ではなくて、“一緒に考えてくれること”だったはずなので。
データを並べて、売れない理由を整理した

ヘノブさんに相談されたときは、どんな話から始まったんですか?

今のお悩みと、これまでのサイト運営の経緯を一通り聞いて、まずGAと売上データを見せてもらいました。
数字を見て、サイト全体を見て、商品構成や価格帯も確認する。
その上で、“今、売上が伸びにくい理由はどこにあるか”を整理しました。

数字を見るだけで、そんなにいろいろわかるものなんですか?

かなりわかります。
感覚で感じていた違和感が、“ここが弱い”とか、“ここは後回しでいい”とか、数字を根拠に判断できるようになる。
それが、売上改善の道筋になります。

漠然としていた不安が、
少しずつ整理されていく感じですね。
「まずはCVRから」と判断した理由

売上改善というと、“CVR対策”という話をよく聞きますが……
今回は、そういう一般論から入ったわけではないんですね。

そうですね。
最初から“売上改善=CVR”と決めていたわけではありません。
売上構造を見たときに、この会社さんの場合は、“集客を増やす前に、まず受け皿を整えた方がいい”と判断しました。

その“受け皿を整える”というのが、結果的にCVR改善だった、と。

はい。
この状態で集客を増やしても、売上へのインパクトは出にくい。
それよりも先に、ちゃんと受け止められる状態をつくる必要がありました。
分析できない構造では、改善は積み重ならない

やるべきことが見えてきたら、あとはページを改善していくだけ、という感じでしょうか?

いや、実は、ページを直す前にやったことがありました。
元々のサイトは、サイト構造として“分析できない状態”だったんです。
改善しても、効果が出たのかどうかがわからない。
それって、次の判断ができない、ということなんですよね。

なるほど……
改善することだけじゃなくて、その後のことまで考えないといけないんですね。

そうですね。
直すことだけ考えていると、ここが抜けがちです。
確かに改善自体は大切です。
ただ、実際には、一つの施策で劇的によくなることは稀です。
PDCAをしっかり回して、確実に改善を積み重ねていくことが重要なんです。
だから、いくら改善を進めても、施策の効果が判断できないサイトでは、売上は改善できません。
売上を伸ばすために、あえて「価格」に踏み込んだ理由

CVR改善で、こんなに売り上げが上がったんですね。
やっぱり、CVR改善の威力は大きいんだなぁと感じます。

CVRだけじゃないんですよね。
実は、この企業さんの場合、CVRと同じくらい大きなボトルネックが、商品価格でした。

えっ、商品価格まで改善の範囲なんですか?
でも、価格を見直すって、かなり難しそうですよね……。

ヘノブでは、商品価格だろうが何だろうが、売上改善につながることには、全部向き合います。
確かに、価格を見直すのは勇気がいります。
でも、この会社さんの場合は、明らかに価格設定が安すぎました。
この先、広告などの集客施策も考えていく中で、新しい運用コストを踏まえると、このままの単価では、売上が伸びても企業さんの負担が増えるだけだと判断したんです。
だから、このタイミングで、価格を見直しましょう、と提案しました。

先の先まで見て判断されているんですね。
EC改善って、本当に奥が深い……。
でも、値上げしたら、売れなくなりませんか?

そうですね。
単に値上げをしたら、CVRは下がります。
だからこそ、値上げとセットで、セット商品の設計と、訴求の改善にも取り組みました。
セット商品の設計について

セット商品、ですか?

たとえば、初めてこのお店で買うとしたら、どちらが手に取りやすいと思いますか?
●えび200g 8,000円
●【一番人気】白えび150g+甘えび加工品セット 10,000円

セットの方が、お得な感じがしますね。

そうなんです。
消費者心理に合わせて、無理のない形で単価アップできるのが、セット商品の良さなんです。
価格に見合った「伝え方」に組み直した

“訴求の改善”というのは、具体的にはどんなことをされたんですか

簡単に言うと、“価格に見合った商品説明にする”ということですね。
白えびは、旬が短く、手に入る時期も、水揚げできる場所も限られています。知っている人にとっては特別でも、初めての人には、その価値が伝わりにくい。
だから、なぜこの価格なのか。どんな人に向いている商品なのか。
そこをきちんと伝えるように、キャッチコピーや説明文を組み直していきました。
安いから売れていたわけじゃない。
伝わっていなかったから、価格を下げないと売れなかっただけなんですよね。

なるほど……。
“ただの雪玉”じゃなくて、“ヒマラヤ産・新雪の雪玉”って言われたら、思わずお金を払いたくなるのと、同じ感覚ですね。
EC運営のモヤモヤは、「考える順番」が見えたときに晴れる

ここまで聞いていて思ったんですが……
この会社さんだけの話ではない気がします。

たぶん、そうですね。
“何をすればいいかわからない”状態は、本当に多いです。
売上を伸ばしたい気持ちはある。
商品にも自信はある。
でも、どこから手をつければいいかわからない。
だから、新しい施策を探してみたり、他社事例を読んでみたりする。
でも、読めば読むほど、“これ、自分の会社でできるかな?”という気持ちになって、余計に動けなくなる。

それで、モヤモヤだけが残るんですね。

そうです。
この会社さんが変わったのは、特別な施策を入れたからじゃありません。
“考える順番”が、初めて整理されたからだと思います。
編集後記|イエティママより

今回お話を聞いたのは、「何をすればいいかわからない」という状態から、少しずつ状況を整理し、前に進んでいったECサイトの事例でした。
振り返ってみると、印象的だったのは、次のポイントです。
イエティママの注目ポイント
- 売上が伸びない原因は、施策が足りなかったわけではなかった
- データを並べることで、「今、見るべき場所」がはっきりした
- 一般論ではなく、その会社の売上構造に合わせて判断した
- 値上げも、訴求の見直しも、単独の施策ではなく“流れ”の中で考えられていた
- 何より、「何をやるか」より先に、「どんな順番で考えるか」が整理されていた

話を聞きながら、これは特別な会社だけの話ではない、と感じました。
やっと、前に進める地図を手に入れた、そんな感じがしますね。
迷っていたわけじゃなくて、道が見えていなかっただけ、だったのかもしれません。







